展示ヒストリー
検閲からの復権。その足跡と広がる共鳴。
表現の不自由展は、2015年にギャラリー古藤での展示から始まりました。そのきっかけは、ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件（2012年）を憂う人たちが急増した検閲事件を可視化しようとの意図から始めたものです。
公共空間や公共施設で検閲を受けた表現を集め、展示する活動は、検閲の問題を周知するとともに、奪われた権利を作品と作家に取り戻すことでもあります。その後、企画運営組織は、幾度かの再結集、改編を経ていまに至ります。
自由と真実を求める市民との連帯、あるいは反感を持つ人々からの攻撃。好悪ふたつの波に翻弄されながらも、私たちは検閲の真相に肉迫すべく、展覧会開催というかたちで地歩を重ねてきました。
あいちトリエンナーレ2019での展示中止事件後、内外からの支援と展示オファーが寄せられましたが、海外での展示は急ピッチで実現しました。
韓国・済州島での「EAPAP2019：島の歌」への参加では、多くの民衆が虐殺された済州島四・三事件の歴史のなかに日本の検閲された作品を展示し、韓国や台湾、沖縄の作家たちと交流しつつ、アジアの政治的矛盾を改めて問い直しました。
台湾の台北市立美術館の個展では、「女性差別」により重点を置いた展示構成をしつつ、平安時代の検閲事件や東北侵略にまで遡って帝国の負の歴史をも振り返る、踏み込んだ展示を行いました。
今後も、多くの市民の期待と声援に応えるべく活動を続けていきます。
１）表現の不自由展 2015年
ギャラリー古藤（東京都練馬区） 2015年1月18日〜2月1日
| 企画 |
| 表現の不自由展実行委員会（合計34人） 共同代表・岡本有佳、永田浩三 ※アライ＝ヒロユキ、岩崎貞明も参加 |
| 参加作家 |
| 安世鴻、大浦信行、貝原浩、キム・ソギョン／キム・ウンソン、九条俳句（作家非公開）、中垣克久、永幡幸司、山下菊二、朝鮮人強制連行追悼碑の資料 |
２）表現の不自由展・その後 あいちトリエンナーレ2019の中の展示企画 2019年
あいち芸術文化センター（愛知県名古屋市） 2019年8月1〜3日、展示「強制」中止、10月8〜14日（12日は台風のため休止）
| 企画 |
| 表現の不自由展実行委員会 実行委員・アライ＝ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三（代表なし） |
| 参加作家 |
| 安世鴻、大浦信行、大橋藍、キム・ソギョン／キム・ウンソン、九条俳句（作家非公開）、小泉明郎、嶋田美子、白川昌生、趙延修、Chim↑Pom、中垣克久、永幡幸司、藤江民、マネキンフラッシュモブ、横尾忠則 |
| 展覧会内容リンク |
| https://aichitriennale2010-2019.jp/2019/artwork/A23.html |
３）表現の不自由展 「EAPAP2019：島の歌」の中の展示企画 2019年
韓国・済州島の済州4.3平和公園 2019年12月19日〜2020年1月31日
| 企画 |
| 表現の不自由展実行委員会 共同代表・アライ＝ヒロユキ、岡本有佳 実行委員・岩崎貞明、永田浩三 |
| 参加作家 |
| 安世鴻、大浦信行、大橋藍、岡本光博、キム・ソギョン／キム・ウンソン、小泉明郎、嶋田美子、白川昌生、豊田直巳、趙延修、中垣克久、永幡幸司、花井利彦、マネキンフラッシュモブ |
４）表現の不自由展 A Long Trail for Liberation（解放への長い道程）2020年
MOCA Taipei（台北當代藝術館、台北市現代美術館） 2020年4月18日〜6月7日
| 企画 |
| 表現の不自由展実行委員会 共同代表・アライ＝ヒロユキ、岡本有佳 実行委員・岩崎貞明、永田浩三 |
| 参加作家 |
| 安世鴻、キム・ソギョン／キム・ウンソン、嶋田美子、白川昌生、豊田直巳、永幡幸司 ※歴史美術資料４点 |
| 展覧会内容リンク（日本語説明文あり） |
| https://www.mocataipei.org.tw/en/ExhibitionAndEvent/Info/Non-FreedomofExpressionExhibition:ALongTrailforLiberation |
５）表現の不自由展 プレ企画 トークイベント［あいトリで隠されたもの〜「対話」と「中立」の落とし穴］ 2020年
神楽坂セッションハウス（東京都新宿区） 2020年10月17日
※2021年6月開催予定の表現の不自由展・東京展のプレ企画です。
| 企画 |
| 表現の不自由展実行委員会 共同代表・アライ＝ヒロユキ、岡本有佳 実行委員・岩崎貞明、永田浩三 |
| 基調講演 |
| 嶋田美子、座談：岡本有佳、嶋田美子、森下泰輔、司会・アライ＝ヒロユキ |
６）表現の不自由展・東京展 2021年 ※開催予定
神楽坂セッションハウス（東京都新宿区） 2021年6月25日（金）〜7月4日（日）
関連出版物
- 『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件ーー表現の不自由と日本』 岡本有佳・アライ＝ヒロユキ編著（岩波書店、2019年）
- 『誰が〈表現の自由〉を殺すのか』安世鴻・李春熙・岡本有佳編著（御茶の水書房、2017年）
- 『《自粛社会》をのりこえる』安世鴻・李春熙・岡本有佳編著（岩波ブックレット、2017年）
- 『検閲という空気 自由を奪うＮＧ社会』アライ＝ヒロユキ（社会評論社、2018年）