岸田首相による少女像撤去要請に抗議します

岸田首相による少女像撤去要請に抗議します

2022年5月25日

表現の不自由展東京実行委員会

岸田文雄首相が、4月28日にあったドイツのショルツ首相との首脳会談で、ベルリン市内のミッテ区に設置されている「平和の少女像」の撤去を求めていたことが、松野博一官房長官の記者会見で明らかになりました。

私たちが手がけた「表現の不自由展 東京2022」でも、この「平和の少女像」を展示しましたが、この作品は、戦時中に「慰安婦」とされた女性が歩んだ苦難の道のりを象徴したものです。そして、日韓関係をめぐる問題として、ではなく、戦争中の女性に対する性暴力の問題を記憶し、克服しようとする普遍的な運動の象徴として、欧米社会では受け入れられているということです。

これに対して、誤った歴史認識に基づいて自分たちの利益だけを考え、他の主権国家に対して自らの歪んだ主張を押し付けるような岸田首相の行為は、断じて許せません。何よりも、民間の団体が提案し、適正な行政手続きによって設置された芸術作品を、国家からの圧力で撤去できると考えていることそのものが、民主主義や表現の自由について根本的な理解を欠いていることを露呈しています。今回の岸田首相の言動は、国際社会において極めて恥ずべき行為であることを認識すべきです。

日本政府は、これまでにも、世界各地に設置されている「平和の少女像」に対してその撤去を求める働きかけをたびたび行っていますが、戦争における加害責任をあいまいにして過去の蛮行をなかったものにしようとする歴史歪曲行為を認めることはできません。日本政府がやっていることは、私たちの「表現の不自由展」に対して暴力的な街頭宣伝で妨害攻撃をしかけてきた右翼勢力と、同レベルの行動だと言わざるを得ません。

過去の歴史を事実として謙虚に受け止め、記憶にとどめるとともに、過ちを反省して過去を克服する努力を続けない限り、新しい未来はやってきません。私たちは、芸術作品と作家の名誉のために、そして民主主義社会の価値と言論・表現の自由を守るために、岸田首相による「平和の少女像」撤去要請に強く抗議します。そして、このような不当な政治的介入を、一日も早く撤回することを求めます。

以 上